和と洋の踊りその2-内と外へー

*この記事を初めてご覧になった方はブログの
「和と洋の踊りープロローグー」の記事をご覧になって読まれた
方がわかりやすいと思います。
 
和の踊りが「内」に向かった踊りだということは、
日本舞踊を知らない方でも何となく、「内股にしずしずと歩く」
という感じで、見た目にもわかりやすい特徴だと思う。

では、「洋舞が外股に脚を使い、
内股に足を使うのが和の踊り」
ということだけかというと
実は、そういう単純なことではない。
前回で和と洋の踊りの、上下に方向に向かう動きの
対称性について書いたが、和と洋の動きの対照性は、
上下(高低)という縦の軸だけでなく、内と外への
横への軸も対照的なのだと思う。

西洋のバレエは、脚の使い方が外向きというだけでなく、
身体が常に空間に向かって最大限に外に向かって動くように
作られている。というより、横にも縦にも無限に空間に
広がっていくことを理想としているのであろう。
「脚も手も自分の身体から空間に向かって限りなく遠くに
向かっていくように」イメージすることをバレエの先生から
絶えず言われていた。
バレエをあまり見たことのない方は、
テレビでもよく見られる、フイギャースケートの演技を
思い出していただくと、以下に書かれていることが
わかりやすいと思う。
身体を空間の中で大きく使うため腕も脚もその付け根から、
大きく動かす。だから、腕も
「常に大きなボールをかかえているよう」
脇は締めないで、腕との間に空間を保つことが基本であるし、
脚も、脚を動かすというより、付け根の腰の辺りから
脚を開いて(外向きにして)使う。それによって脚を
動かす全ての動きにおいて、脚がより長く見え、同時に
動かす許容範囲も広がり、自由に空間に大きな脚の線を
描くことになる。
「腰からが脚なのよ。」バレエの先生から
よく言われていた。
腕や、脚だけでなく、首の動きも同じだ。
できるだけ首を長く見せるよう、肩を下げ、
頭を上に引っ張られているような感じで首を
伸ばす。顎を下げたり、引いたりせずに、
顎の下の空間もできるだけ広くする。
「あごをあげて」
洋舞で必ずいわれることだ。

ところが、それに対し、手足が全て、
「内に向かって動き、できるだけ空間へ身体を広げない」
というのが、日本舞踊だ。
重い衣装をつけた制限の中での、動きの美というのを
求めているものなのかもしれない。
だから、腕も、脚も基本的に
その付け根から動かさず、腕は肘から先の部分だけ、
脚は、膝から下だけを動かすというのが基本だ。
腕を動かしている時に、
脇のところにできるだけ空間ができないよう、
脇を締めた状態で、腕を上げ下げするのが理想。
腕を上げた動作の時に、着物の袖が
下がって手首のあたりが見えてしまうような動かし方はNG。
脚も、両方の膝が離れないように、歩くのが理想で、
歌舞伎の役者さんや、舞踊家さんは、踊りの歩き方の
基本を習得するため、膝のところに懐紙をはさんで、
歩くお稽古をしたとか。
(今でもなさっている方もいると思います)

私は、始めの頃、内股にはできても、
脚の付け根から元気よく歩き、
歩幅も身体のわりに大きすぎるという、日本舞踊の
歩き方から遠いものだった。そのため自宅で
両膝を紐で縛って歩き方のお浚いをしたことがある。
腕も、付け根から大きく動かす洋舞の癖で、腕をあげると
手首が丸見えだったり、袖が異様に揺れたりしたものだ。
また、顎をぐっと下げて顎から下の首の部分の空間が
あまりないようにしないといけないのに、
顎をあげて使う、洋舞の首の動かし方をやってしまい、
日本舞踊では「えらそうな踊り」になってしまうことも。
日本舞踊を踊る時に、たとえ脚を内股にしていても、
洋舞のように腕や、脚を付け根から
動かし、身体を外に広げて使うと、バタバタとした
落ち着きのない雑な踊りに見えてしまうのだ。


ただし、日本舞踊には、演目によって女の踊りと男の踊りと
があり、当然、体の使い方もかなり違う。
ここで、「内にむかって」という身体の動かし方は
基本的に女の踊りの場合なので、男の踊りは、状況が違ってくる。
脚の使い方が外股で、腕も締めた使い方でなく、洋舞に近いところ
もかなりある。
だがもちろん違いもあるわけで、表面的に似ていても本質的に違う。
「似て非なり」
これが実は、私にとって、やっかいなものとなった。
踊りをやる人たちは、性別にかかわらず
女の踊り、男の踊りを両方をお稽古する。
私の場合、全てが、洋舞と相反する女の踊りは、
身体も「バレエと違うぞ」直ぐに心得てくれやすいが、
表面的になまじっか、似ていると、私の身体は、
「同じらしい」という誤解をし、男の踊りをやっているときのほうが、
無意識に、洋舞のような動きを行ってしまいやすいからだ。

だから、女の踊りだけをやっているときのほうが、
洋舞で身についた癖が、日本舞踊では障害になるということの
大変さを、これほど痛感してはいなかったように思う。

この記事へのコメント

rin
2009年09月13日 23:17
先日、達喜会を拝見しました。
あやさんのブログから参りました。
バレエとの対比、よく判ります。
偉そうな首はなかなか直りません(-"-;)
男踊りの方が裏の裏は表じゃない的な難しさがありますね…上手く言えないけど。
てか、日本舞踊は難しいです(笑)
yukiemi
2009年09月14日 00:37
rin さんコメントありがとうございます。
「男の踊りが裏の裏」でないというの言いえて妙
です。ほんとにそうですね。かつて踊りを始めたころ、男の踊りはバレエに近いなどと考えていました。なんと単純だったその頃の私・・・(^^;)

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