義経の籠り堂

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新年早々、「義経千本桜」に縁の地について。

これを書いているのは、暮れの大掃除のときに、
出てきた去年の雑誌「歌舞伎美人」
に書かれていた記事を見て、
ずいぶん以前にその地を訪れたときの
鮮明な記憶が蘇ったからだ。
でもそれは、
今年私が踊る「お兼」の縁の地へと私を
導くきっかけともなってしまったからでもある。
(次回にお兼縁の地について書きます)

昔から桜の名所として、また修験者の修行の場としても
名高い吉野山。
教員になったばかりのころ、国語科の研究会で
万葉集に詠まれた地を訪れての実地研修に参加した際、
天皇が行幸の地でもあった吉野の地も
研修地に含まれ、初めて私はその地を訪れた。
そして、これまで体験したことのないことを
体験することになる。

吉野に宿泊した日に、次の日の早朝、希望者は、
小型のマイクロバスしか通らない山道を登った先にある
「義経の籠り道」を見学することができるという。
「義経の籠り堂」とは、その昔、兄頼朝に追われる義経が、
奥羽へと逃げのびようとしていたとき、追っ手から、
身を守るため隠れた場所だといわれている。

「籠り堂早朝ツアー」に参加することにした私は、
やっと夜が明けたばかりの夏の早朝、
宿泊先からマイクロバスに乗り込んだ。
途中からは、さらに、徒歩でしか行けない細い山道だけの
奥深い吉野の山は、辺り一面濃い朝もやが立ち込め、
歩いてきた方を見下ろすと下界も雲海に白く
覆われている。
向かう先も、来た道のりも白く包まれた世界。
何だか、現世を遠く離れた地にでも来ている様な・・・

そのとき、
その朝もやの立ち込める木立の間から、
白い杖をついた人影のようなものが!
「仙人が現れた!」
かと思ったら、そのお堂を管理しているお寺のご住職だった。(^^;)
白いおひげを生やし、袈裟を身につけない白衣をまとい、
杖をついて朝もやのけぶる中から現れたそのお姿はまさしく
現世の人とは思えなかった。
そのご住職の案内で、私達は、一度に5人程度の人数のみ
その小さな籠り堂の中に通された。
(それ以上はその中に入るスペースがない)

外側から見れば、何か特別なものは感じない
普通の小さなお堂だったのだが、
中に入って、入り口を閉められた瞬間、
どよめきがおこった。
外は明るいのに、真っ暗の闇なのだ。
自分の足元も、手もどこにあるのかわからない。
その闇は、これまでもその後も、これが初めての体験でないかと
思われる程の、おそらく現代の普通の日本の社会にはもう
存在しなくなっているような闇の世界。
そんな体験したことのない、何も見えない闇の中にいると、
もうそれだけでいいようの不安と恐怖に駆られる。
だが、この闇の中で、お堂を歩いて、ご住職がOKを出すまで
入り口を開けないというよくわからないきまりがあるらしく、
大の大人たちが、恐怖に駆られながら、数分間(でもものすごく
長く感じた)そのお堂の中でよたよたと歩いていた。

そのときに初めて思った。

これが、古の人々が恐れた「本当の闇」というものでないのだろうか。

それまで、源氏物語で「源氏の君が夜の闇の恐ろしさに涙を流された」
などという下りを読むと、大の男が何とか弱いことだと思っていたし、
物の怪だの怨霊などというものも、昔物語のこととすませていたけれど、
この籠り堂の闇を経験したとき、そうでなくなった。
これほどの深い闇に閉ざされれば、自然とそうした恐れおののく気持ちも、
何か、人間を超えた別世界の存在というものの存在も信じられるような
気がする。

義経という人物に直接かかわることでは
ないけれど、現代にはない初めての「闇」を
体験した義経の籠り堂。
万葉集に詠まれた大和三山の美しい眺めや、
吉野川の水の色。そして飛鳥寺の大陸風の
鼻筋の通ったハンサムな大仏様もよかったけれど、
何よりもこの、早朝での吉野山での時間が、
私には、その研修中最も鮮烈に蘇ってくるような
強烈なものだった。

そんなことを思い出しながら、
そういえば私は、かつて
「OOに書かれている場所が見たい。」
「OOさん縁の地に行ってみたい。」
ということから、よく突発的に
日本国内といわず、国外まであちこちに旅していたなあ。
日本舞踊をやるようになってここ数年、
時間もお金もなくて、昔のようにほいほい旅行など
しなくなったけれど、(というか全く行ってない)
私が踊る「お兼」は近江の国の伝説上の女性とか。
近江の、どのあたりなんだろう?
今でもそのお兼縁のものは何か残ってないのかな
そんなことが急に気になってきてしまった・・・
(続きは次回)

この記事へのコメント

はすみん
2010年01月12日 06:45
今年初めての書き込みです。
すごい体験をしたものですねー。百鬼夜行の世界だ!
確かに今の時代に、闇を経験することって難しいのでしょうね。意識の中にも電気や明かりの概念は染み付いていますし。
こちらの先生に吉野にずっと住んでいる方がいます。お話を聞けば聞くほど、ゆっくり訪れてみたい場所です。
東京近辺であれば、まだ行きやすいですよね?それこそ浅草近辺も、たくさんいろんなものがあるので、今度一緒に散策したいです♪
ちなみに、埼玉県越谷市には、近藤勇が捕らえられていた陣屋あとが残っています。やっぱり日々アンテナを高くいたいものですねー。
yukiemi
2010年01月12日 22:44
はすみんさん
今年もコメントありがとう!
ここでの体験は、いつか書いて、人に伝えたいなと思っていたことの一つなので、共感しながら読んでもらえてうれしいです。
帰国が近づいてきて、日本でやりたいこと
いろいろと思いがめぐることでしょうね。
もちろん、踊りのことも♪
もうすぐ、会えますね^^

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